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「ちょっ、ちょっと待ってくれ。君は……なんなんだ……」
「だから標的……」
「そうじゃなくて! ……普通、脳天をぶち抜かれて生きてる奴はいない。傷痕が残らないなんてことも……ない」
少女は、また何でもないように言った。
「それは私がヤオビクニだから」
「ヤオビクニ?」
「人魚の肉を食べて、不死になった人のこと」
人魚なんてものがいるとは信じてないが、先程のことといい、少女の態度といい、全部が全部嘘っぱちではないようだ。
「だから、誰も私を殺せない。怪我はするけどすぐ治るし、問題ない」
「痛くないの?」
少女はきょとんとする。
「痛いよ?」
俺は思わず、顔を顰めた。
それと同時に、ドタバタと争うような音が、廊下の方から聞こえた。
どうやら本格的に、殺し屋達も動き出したらしい。
……少女が見つかるのも時間の問題だろう。
主催者からの指示なのか、どうだかは知らないが……この少女は、死なないことをいいことに、自分が標的だと自己紹介しそうだ。
そうじゃなかったら、俺にも言わないと思う。
「……名前、なんていうんだ?」
「ミオ」
「そうか。ミオ」
ミオを脇に抱える。
「な、なにしてるの……?」
始終無表情だったミオも、流石に取り乱したようだ。
「俺はデスゲームより、脱出ゲーの方が好きなんだよ」
「まさか──」
そのまさかである。
俺はミオを抱えたままドアを蹴破り、廊下を走り出した。
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