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「続いて、花を納棺していただきます」
私はカーネーションとトルコキキョウが混ざったお盆を持って、会葬者にお盆を差し出した。お配りするお花の順番は、事前に当真さんが決め、指示を出していた。まずはカーネーションなどの洋花、次にスターチスなどの茎が残っているお花、生花に一輪ずつ入っているカトレア、最後に故人様の思い出のお花であるユリをお配りする。
最後のユリをお配りした後、しめやかな空気を切り裂くように、大きな泣き声が式場に響いた。小さな男の子が、お棺の前で火が付いたように泣いている。故人様のひ孫さんである、3歳の男の子だった。
「おはな〜!おはないれる〜!」
どうやら、ユリのお花をお棺に入れたかったようだ。まるで昔の自分を見ているみたいで胸が苦しくなる。どうすればいいんだろう?
すでに納棺されているユリを取り出して、あの子に渡してもいいだろうか?でもそれじゃ、そのユリを納棺した人の想いをふいにしてしまうんじゃないだろうか…?
どうすればいいのか分からないけど、どうにかしてあげたい。
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