1 『就活とは、おっぱいである』

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…今にして思えば、完全にどうかしていたと思う。夜な夜なブツブツ言いながら机に向かう私を、同棲している彼氏・高木悠人が若干怯えた表情で見つめていた。 「…果音、なにしてんの?」 「就活」 「…その『C』とか『推定D』とかのアルファベットは、なに?」 私の書き出した統計データを覗き込み、悠人は首を捻った。私は机に向かう体を横にずらし、彼の方に向き直った。私がよほど思いつめた表情をしていたからだろう、悠人も居住まいを正して心配そうな表情で私を見つめた。 「…ねえ、私のおっぱい、どう思う?」 「な、なに急に?」 「いいから答えて」 強い口調でそう言うと、悠人はう〜んと唸って腕を組み、パジャマに包まれた私のおっぱいを凝視した。まつ毛が長くて、くりっとした大きな瞳を二、三度瞬かせて、悠人は困ったように笑った。 「…俺は好き、かな」 はあ、とため息をついて悠人を睨む。悠人は頭をかきながらはにかんでいる。女の私から見ても羨ましいくらいにサラサラな髪から、お風呂上がりの石鹸の香りが漂ってくる。 「もしかして、またマナちゃんになにか言われた?」 「なんで?」 「果音が変なことしてる時は、大抵そうだから」 そう言って悠人は私の肩に手を回し、後ろから抱きすくめた。180cmの長身の彼は、容易く私を抱きかかえて、胡坐をかく足の上に乗せた。いつまで経っても子供扱いされてるみたいで、少しムッとする。
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