10人が本棚に入れています
本棚に追加
…今にして思えば、完全にどうかしていたと思う。夜な夜なブツブツ言いながら机に向かう私を、同棲している彼氏・高木悠人が若干怯えた表情で見つめていた。
「…果音、なにしてんの?」
「就活」
「…その『C』とか『推定D』とかのアルファベットは、なに?」
私の書き出した統計データを覗き込み、悠人は首を捻った。私は机に向かう体を横にずらし、彼の方に向き直った。私がよほど思いつめた表情をしていたからだろう、悠人も居住まいを正して心配そうな表情で私を見つめた。
「…ねえ、私のおっぱい、どう思う?」
「な、なに急に?」
「いいから答えて」
強い口調でそう言うと、悠人はう〜んと唸って腕を組み、パジャマに包まれた私のおっぱいを凝視した。まつ毛が長くて、くりっとした大きな瞳を二、三度瞬かせて、悠人は困ったように笑った。
「…俺は好き、かな」
はあ、とため息をついて悠人を睨む。悠人は頭をかきながらはにかんでいる。女の私から見ても羨ましいくらいにサラサラな髪から、お風呂上がりの石鹸の香りが漂ってくる。
「もしかして、またマナちゃんになにか言われた?」
「なんで?」
「果音が変なことしてる時は、大抵そうだから」
そう言って悠人は私の肩に手を回し、後ろから抱きすくめた。180cmの長身の彼は、容易く私を抱きかかえて、胡坐をかく足の上に乗せた。いつまで経っても子供扱いされてるみたいで、少しムッとする。
最初のコメントを投稿しよう!