ボケナスとお葬式

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斎場を飛び出し、緩い坂道を駆け上がったところで、足の裏が痛くなって私は立ち止まった。 ヒールは嫌いだ。大っ嫌いだ。アイツと同じぐらい嫌いだ。ちょっと走っただけなのに、どうしようもないくらい息が上がっている。運動不足のたたりだ。 時刻は21時19分、もうすぐ下り電車の到着時刻だ。一刻も早く家に帰りたいのに、なぜか私の足は、落合駅近くのコンビニに向かっていた。 脇目も振らずにドリンクコーナーに向かい、500ミリ缶ビール2本を鷲掴みにする。酒のお供には、ぶっとい粗挽きソーセージとカカオ62%のチョコレート。ダイエット?プリン体?知るかそんなもん。プリン体が怖くて葬儀ができるかってんだ、ちきしょーめ。 ダンッと、乱暴にレジに品物を置くと、金髪の店員さんが目を丸くしながら私を見た。なに見てんのよ、ムカつく。なに髪染めてんのよ、全てがムカつく。 ムカつくから会計が済んだ瞬間にビールを開けて飲んでやった。黄金色の液体がゴクゴク私の喉を潤していく。全部飲み干すつもりだったのに、炭酸キツくて無理だった。あり得ないほどむせた。ムカついた。 「お姉さん、スゲー飲みっぷりっすね」 金髪の店員さんが感心した様子で親指を立てた。スゲームカついた。
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