ボケナスとお葬式

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私は駅には向かわず、山手通りを歩いて帰ることにした。落合斎場から家までは、歩けば多分1時間くらいかかる。頭を冷やすにはちょうどいいと思った。このまま帰ったら絶対悠人にあたっちゃう。とにかく落ち着かないと。そう思いながらビールをあおいだ。キンキンに冷えたビールが、熱くなっている内蔵に流れ込んでくる感覚がした。 …ぜんぜんおいしくない。ビールはぜんっぜんおいしくない。だけど今の私にはアルコールが必要だった。酔いたかった。酔えるなら、コンビニの入口にあった消毒用アルコールをガブ飲みしてもいいぐらい酔いたかった。 アイツの顔がちらつく。その度に私はビールをあおいだ。ヒールのせいで足が痛い。いつの間にか2本目のビールに突入したけど、それでもアイツの顔がちらついた。 大っ嫌いだ。ヒールもビールもアイツも。特にアイツが嫌いだ。なによりも嫌いだ。毛虫と同じぐらい嫌いだ。なんなら毛虫の方がちょっと好きなぐらいだ。
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