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『このボケナス!』
「…うるせーばか」
『お前は軽く考えてんのかもしれねぇがな、遺族にとっては最初で最後の大事な葬式なんだよ!』
「…わかってるわよ、そんなこと」
『辞めちまえ』
「…やめてやる」
やめてやる、やめてやる、やめてやる、やめてやる。グルグルグルグル。頭の中で『やめてやる』がグルグルしてる。『くやしい』の文字もグルグルしてる。
就活失敗した。ごめんなさい、お父さんお母さん、悠人。ちょっと結婚遅くなるかも。
雨は冷たいのに、なぜか頬が熱かった。気付いたら涙が出ていた。止めようとしても、あとからあとから涙が出てきた。慣れない化粧も、この雨と涙できっとひどい状態になってるんだろうな。全部アイツのせいだ。
ぶっとい粗挽きソーセージを頬張り泣きながら、私は冷たい雨に打たれ、無数の光が飛び交う山手通りを歩いていた。
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