1 『就活とは、おっぱいである』

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「就活とは、おっぱいである」  私・種村果音(たねむらかのん)の大学4年の春、人が混み合う校内の食堂で、私の悪友・小川マナはそうのたまった。彼女が熱弁するところによると、日本の就活は欧米のそれに比べて10年遅れており、その最たる例が、『女子就活生の合否を、おっぱいの大きさで決めている』のだと言う。 その根拠とは、私達と同じぐらいの成績(あまり芳しくない部類)である、同じく悪友の吉田愛梨にある。彼女は3年の冬に早々と大手商社と他3社の内定を勝ち取ったにも関わらず、私達は一社たりとも引っかかっていないから、それがマナの暴論の根拠であった。 愛梨はEカップ、対する私達はAよりのB。まさに月とすっぽん、猛将と足軽、ダイヤモンドと鉛筆。並んで歩くと揺れが違うし、夏場の薄着ともなれば格が違う。まさに暴君、おっぱい暴君、おっぱい暴君ハバネロ。 どこに行っても男子の視線は自然と愛梨に集まる。合コンなんてやればいっそう顕著だ。男子は私達の雑兵おっぱいになんぞ目もくれず、一目散に愛梨の本丸おっぱいを目指して突撃する。マナ曰く、一度タイムを計ったところ、1分間に平均12秒、愛梨の迫力の谷間に男子の視線が向けられていたらしい。
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