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そうして、ゴーストハウスでの生活が始まった。
こんな所で生活をするのは、もちろん初めての経験だ。
両隣は空き室だ。
部屋の壁をコンコンと叩いてみると、それなりに響かない作りになっているようだ。
ちゃんと防音がされているというわけではないのだけど、音大生向けのマンションなら、ここに住むのは音大生なのだろうから、そこはお互い様で気にしない部分と言うことか。
でまぁ、荷物のなかから楽器を取り出して、早速音出しをしてみる。
いつも通りにちゃんと音出しをしてるんだけど。
音が曇っている。
と言うよりも、音が飛ばない。
なんか、空気が重いせいかも知れない。
それでも、がっつりしとかないと、また先生に怒られるしね。
そうして、いつも通りに時間を忘れて練習していた。
そして、お腹が空いた頃になって、食べ物の買い置きが何にもないことに気づいて、コンビニに行くことにした。
なのに、テーブルの上に置いておいた鍵が見つからない。
寝袋の辺りにも、キーボードの辺りにもない。
て、がら空きのマンションなのだから、鍵をかけなくても暫くは大丈夫だろうと思って、少しの間出かけることにした。
でも出かける時にはフルートを持って、それから、念のために扉のドアノブ側の足元に鉛筆のキャップを挟んでおく。
こうしておけば、誰かが仮に部屋に入り込めばその位置がずれてしまうから、それで誰かが入ってきたかどうかの判断ができる。
まぁ、ほとんど心の保険的な意味合いだけどね。
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