410号室

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 そうして、ゴーストハウスでの生活が始まった。 こんな所で生活をするのは、もちろん初めての経験だ。 両隣は空き室だ。 部屋の壁をコンコンと叩いてみると、それなりに響かない作りになっているようだ。 ちゃんと防音がされているというわけではないのだけど、音大生向けのマンションなら、ここに住むのは音大生なのだろうから、そこはお互い様で気にしない部分と言うことか。 でまぁ、荷物のなかから楽器を取り出して、早速音出しをしてみる。 いつも通りにちゃんと音出しをしてるんだけど。 音が曇っている。 と言うよりも、音が飛ばない。 なんか、空気が重いせいかも知れない。 それでも、がっつりしとかないと、また先生に怒られるしね。 そうして、いつも通りに時間を忘れて練習していた。 そして、お腹が空いた頃になって、食べ物の買い置きが何にもないことに気づいて、コンビニに行くことにした。 なのに、テーブルの上に置いておいた鍵が見つからない。 寝袋の辺りにも、キーボードの辺りにもない。 て、がら空きのマンションなのだから、鍵をかけなくても暫くは大丈夫だろうと思って、少しの間出かけることにした。 でも出かける時にはフルートを持って、それから、念のために扉のドアノブ側の足元に鉛筆のキャップを挟んでおく。 こうしておけば、誰かが仮に部屋に入り込めばその位置がずれてしまうから、それで誰かが入ってきたかどうかの判断ができる。 まぁ、ほとんど心の保険的な意味合いだけどね。
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