410号室

6/19

16人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
 そうして、不動産やさんの車に乗せてもらって、私たちはその物件へとやってきた。 これは… 想像以上に古い…。  全体的には、長細いマンションなんだけど…。 元々はクリーム色だったと思われる外壁は、主要道路に面しているせいか、排気ガスで黒ずんでいるし、各部屋のベランダの手すりは足元側が朽ちてボロボロだ。 しかも、カーテンもかかっていない、空き室と思われる部屋が遠目からも半分以上だ。 でも、五階部分のカーテンは全部閉まっている。 「これ、さすがにムリでしょ!」 ルリちゃんが少し声を荒げて言う理由もよくわかる。 それくらいボロボロだ。 ルリちゃんは、私の肩にポンと手を置いて、 「ここ、マジやばいよ。」 まぁ、たしかに古いし、かなり雰囲気がどんよりしている。 でも、こちとら切迫した問題だからね! 「こんなとこ、平気なの?」 そう言うルリちゃんに、ちょっと意地はって、 「うん? なにが?」 そう言うと、 「あのさぁ! 足のない人とか? 不自然に浮いている人とかだよ! そんなのいたらどうすんの?」 まぁ、そうなんだよね。 あり得る事なんだけどさ。 でももっと怖いものがあるよね。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加