01.お嬢様との出会い

2/11
15人が本棚に入れています
本棚に追加
/174ページ
泰良(たいら)くんおかえりー……て、どうしたのその怪我?」 家に帰るとショーケースの後ろ側に立つ璃香子(りかこ)が目を丸くした。 肩の高さに切り揃えられた黒い髪。Tシャツと黒のふんわりとしたスカートにお店のエプロンを身に付ける。 俺の両親が経営するのは、団地の中に昔からある小さな洋菓子店。 今どき、お洒落、映えるとはいえないけど、経営は悪くないらしい。 うちで働く従業員の璃香子は、高校の頃からバイトしていて、去年卒業してからも仕事を続けている。 その璃香子が両手を腰に当てて口を開いた。 「もー、また喧嘩したの?」 「俺、悪くねぇし。向こうから突然因縁つけてくんだぜ?"加賀美(かがみ)泰良(たいら)ちょっと面かせ!生意気なんだよ"ってさー」 「まったく、そんな派手なキラキラ頭してるから目ぇつけられるんだよ。それに、まだお昼前なんだけど、またサボり?」 璃香子の華奢な手が俺の髪を梳かすよう触れてくるから、少しくすぐったい気分になる。 こうやって璃香子に撫でられのは嫌いじゃない。むしろ、気持ちがいいくらいだけど。 「ほら、手当てするからそこ座って」 「いらねーよ」 「…………」 「あ?璃香子、どした?」
/174ページ

最初のコメントを投稿しよう!