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「泰良!おばあさま、私のこと華って呼んだわよね?」
「んぁ?」
帰りの車の中で、華花が興奮するように俺の腕を掴んできた。
「華花ちゃん、じゃなくて華って呼んだわよね!?」
「なんだよ、いきなり……」
「泰良さま。華はお嬢様の愛称なんですよ。お嬢様のおばあさまからは、日頃から華と呼ばれていたんです」
華花の言葉を補足するように、周が間に言葉を挟む。
「そうなのよ!おばあさま私のこと忘れてしまってから、華花ちゃんって呼んでいたのに、さっき"華"って呼んでくれたのよ!凄いわ!!」
「ふーん」
「もしかして私のこと少し思い出したんじゃないかしら?」
「んな簡単に思いだ……」
「昔の記憶はエピソード記憶といって、比較的保たれやすいですから。思い出のあるケーキの味は、お嬢様のおばあさまにとって良い刺激になると細谷さんも仰ってました」
「まぁ、そうなのね!?嬉しいっ、嬉しいわ!泰良のおかげだわ!」
「そうですね。泰良さま……のご両親のおかげかも、しれませんね」
両手を合わせる華花が凄い嬉しそうに笑うから、自然と華花の頭に手が伸びて柔らかい髪に触れた。
「良かったじゃねーか」
「ふふっ、本当に幸せな気持ちだわ!」
この時──、ばあさんと会うのが最後になるとは、俺も華花も思いもしなかったんだ。
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