零話 前編

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零話 前編

あれから十年がたった。 今でもあのときの事を僕は鮮明に覚えている。  平成二十四年の五月十八日○○高校で事件が起きた。 みんなが睡魔におそわれはじめている五時間目、放送室からひとりの男の声が聞こえてきた。 先生も何も知らされていないようで手を止めて聞いている。 「え~みなさんに連絡です、この学校に爆弾を設置しました教室ごとに一つ以上あります」 この一言で教室内がどよめく。 「嘘だと思うのならロッカーを確認してみてください。」 先生が手に持っていた教科書を置き教室の後ろにあるロッカーに近づき扉を開けた。 僕はロッカーに一番近い席だったので後ろを振り返った。 そこには、黒い箱に入っている爆弾のような物があった。 表面には赤い数字が点滅していて、30.00と書いてある。 「確認していただけましたか?。」 「この校内にある爆弾はいまから三十分以内 にこちらの要求が通らなければ爆発します。」 この一言で校内がパニックになる。 逃げ惑う者や泣き出してしまう者助けを求める者や、隣の教室からもいろんな音が聞こえてくる。 先生たちが鎮めようとするも落ち着く様子はない。 僕は近くの友達に話しかけ始めた頃、爆音がきこえる。 「みなさんが逃げ出さないようにひとつ爆弾を爆破しました。」 「先ほどもいった通り要求が通らなければ爆破するだけなのでまずは要求を聞いてください。」 教室は静まりかえる。 「私からの要求はひとつ、警視庁警視総監の 娘、髙山清佳の身柄です。」 教室内はひとりの女の子に視線が集まる。  髙山清佳はこのクラスにいる。 「なのでいまから二十分後に屋上に来てください、他の生徒のみなさんは別に逃げて頂いてもかまいません。」 「ただ、清佳さんが学校を出てしまうと、その瞬間ドカンとなりますのでお気をつけてください。」 この放送のあと清佳さんと教師たちが残り他の生徒は逃げることが決定した。 さっきの放送から五分ほどがたった、僕は先生たちから隠れて犯人よりも先に屋上に上がった。  しばらくすると犯人がコツコツと階段を上ってくる音と話す声が聞こえる。 「はい、これであらかたあの計画の下準備が整いそうだ。」 犯人は誰かに命令されて行っているようだ。 「私は金さえもらえればいいだけなのでそこらへんはよろしくお願いしますね。」 犯人が電話を終えた頃、階段から二つの足音が聞こえてきた。 そこには髙山清佳と一年主任の城倉先生の姿があった。 「できればひとりで来て欲しかったんですがね、、、まあ良いです、さあ早くこちらへ来なさい。」 少し清佳と先生が話すそぶりを見せた後ひとりで犯人の元へ近づいていった。 どうしてこの場にいるのに助けられない。 一人を犠牲に得た幸せなんて本当の幸せなんかじゃない!。 僕は飛び出した。 犯人に向かって殴りかかる。 はじめは驚いた顔をした犯人だが冷静にポケットから拳銃を取り出し僕に向かって放った。  パンパァン。 僕はのけぞろうとした。 間に合わないと思ったが先生が突き飛ばしてきて僕を守った。 「センセェ!。」 僕は思わず声を出した。 先生のスーツから、赤い血がにじみ出ている。 「必死で生徒を守る教師の姿、私感動しました。」 「ん~、でも顔を見られてしまっているので 殺してしまうしかありませんね。」 と言うと犯人は僕のほうに拳銃を向けて放とうとした。 だが倒れていた先生が決死の覚悟で犯人に飛びかかった。 「逃げろ!このままじゃ誰もこいつを捕まえられない、お前が逃げて見たことを伝えるんだ!。」 先生の言葉を聞き迷いもしたが階段を駆け下りた。 僕が降りていたら警察がもう二階までのぼってきていた。 僕は屋上で起きていたことと、あと五分ほどで校内が爆発してしまうことを話した。 話し終えると、だんだん目の前が暗くなっていった。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 僕はベットの上で目を覚ました。 ここは病室のようだ。 あたりを見渡すと友達の古村洋介と七倉彩乃 が心配そうな顔をしながらこちらを見ている。 「大丈夫だよ」と声をかけると二人はホッと した表情を見せた。 「清佳達はどうなったの」不安そうな声で聞いた。 彩乃が首を横に振る。 「たすけられなかった、、、あのあと警察の人達が屋上に行ったんだけどね、そのときにはもう犯人と清佳ちゃんは、いなくなってて城倉先生が倒れていたの。」 僕は、ただみんなの足手まといにしかならなかったのか。 二人は伝えた後、お見舞いの品をおき帰って行った。 それから数日間は大事をとって入院していた。  あの日を境にすべてが変わった。 あの二人とは仲が悪くなったわけではないが、 しばらくはなしていない。 まああんな事があったからかもしれないが清佳が僕たちの中心だったからだろう。 そこからというもの、僕たちは何事もなく過ごしていた。 それから一ヶ月がたった。 朝起きてテレビを見ると、ひとつのニュースが流れた。
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