消えたし、消える、意味もなく

　そもそも、よく考えれば鳩が豆鉄砲を食らうって、なんだ？

　鳩が豆鉄砲を食らったところなんて見たことないし、鳩はそもそも無表情だ。
　鳩は豆鉄砲なんて食らわなくても、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をもともとしているじゃないか。

　というか鳩に豆鉄砲を食らわすな。

　虐待じゃないか。

　どう考えても虐待。

　お前に人の心は無いのか？

　許してはおけん。

　他の誰が許そうとも、僕は絶対に許さない。

　他人の痛みを理解せず、弱者を痛めつけ自分より下に何かを置かねば自身の優位性を保てない惰弱で卑屈なその腐った精神。僕は断じて許しはしない。

　許しはしないし、それに豆鉄砲ってなんだ？

　見たことない。

　見たことないし、もし豆を飛ばす道具であるなら、食べ物を粗末にするな。

　鳩に豆鉄砲を食らわす時点で、僕も動物愛護団体も黙っちゃいないし、食べ物を粗末にする輩(やから)は相応の報いを受けるべきだ。

　そしてそんな悪意と狂気に満ちた言葉を、平然と小学校で教えるなんて、頭がおかしいのかこの国の偉い連中は？

　なんなんだ。

　一体、誰が悪いんだ？

　鳩か？

　鳩が悪いのか？

　鳩がもともと豆鉄砲を食らったような顔をしているから悪いのか？　

　であればもういっそ、僕は鳩なんかいなくなってしまえと願わざるを得ない。

　そうすれば、こんなわけのわからない言葉を使うこともなく僕は救われるし、食べ物も粗末にされずに鳩も虐待されないはずだ。

　消えろ、鳩。
　猫同様に。

　虚空の彼方へ消え去れ。

　そう思っていたら、次の日、世の中から鳩が一斉に消えていた。

　……もうよくわからない。