29人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
少し前、友人との会話の流れの中で、『猫の額ほどの……』と、日常生活ではおよそ使わないような表現をして語彙力の高さとオシャレさを誇示してみたら、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をされた。
一瞬、僕の高度な言い回しに理解が追い付いていないのかと疑ったが、どうやら違うらしい。
いくら説明しても、猫という動物そのものがわからないと返される。
――猫を知らないだなんて、変わった人間もいるものだ。
今度は僕が、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしてしまった。
猫というものを知らないのであれば、僕の素敵な表現技法を解さないことも無理はないが、僕のオシャレさを理解できないことは、なんだかもったいないと感じる。
しかし、何かがおかしい。
猫を知らない人間が、いるものだろうか。
僕は不思議に思った。
最初のコメントを投稿しよう!