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白い息がどんよりとした曇り空に溶けていく。その様子を目で追っていると、ここぞとばかりに冷たい風が吹きつけて、思わず身を震わせた。奪われた熱を取り戻すために目元までマフラーをたくし上げる。立ち疲れて高校の正門に背中を預けていたけれど、それもやめた方がよさそうだ。
昨日から降り続いた雪は夜中の内に止んだ。しかしこの天気と寒さではいつ降り出してきてもおかしくはない。
車道は雪が踏み固められ、とても滑りやすそうに見えた。平日の昼下がりで交通量は多くないが、目の前を走っている車はどれも慎重に進んでいる。幸いにも、先生方が雪かきをしてくれたおかげか、正門近くの歩道はいつも通りのアスファルトが顔を出している。
白い息がマフラーの合間を縫って上っていくのが視界の片隅に映った。
時間の流れが遅く感じる。単純に手持無沙汰ということもあるけど、平日だから人も車もまばらだから余計に。
後輩たちは今頃眠気眼を擦りながら、あるいは睡魔に負けながら授業受けている頃だろう。受験生にもなれば3学期から自由登校だし、こうして外にいても問題はない。だけどついこの間までは学校にいるはずの時間だったから、学校の外で、しかも私服でいるというのは、なんだか罪悪感がある。
「お待たせ」
温かい飲み物でも買いに行こうか悩み始めたところで、ようやく目当ての人物が高校の敷地から出て来た。制服の上にコートを着込んでマフラーを巻いているけど、スカートは流石に寒いだろうに。
「遅い」
「だから一緒に来ればよかったじゃん、耳まで真っ赤だし。ほら、先生から貰ったから」
そう言いながら顔に押し付けてきたカイロをありがたく頂戴する。そのまま頬に押し当て、凍り付いていた顔が徐々にほぐれていくのが分かる。そんな姿を彼女は面白そうに見つめるものだから、なんだか気恥しくなって顔を背けた。
「雪降る前に帰るぞ」
「あれ、降る予報だっけ?」
「知らないけど、降りそうな雰囲気だし。電車止まっても困るだろ?」
「まぁ確かに」
あまり納得していない様子だったけど、帰れなくなると困るということには同意だったらしく、素直に駅に向かって歩き出した。
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