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二人で並んで歩くと、外側の足は端に寄せられた雪を踏みつけることになる。なんとも言えない鈍い足音が静かな街に響き、それが彼女には面白いらしく、わざと雪を強く踏みしめている。
「先生なんて?」
「ん?ああ、とりあえずおめでとうって。あと本番はこれからだから風邪ひくなよって」
「それだけ?」
「ちょっと雑談もしたけど、それだけかな。先生も忙しそうだったし」
「……来た意味あったか?」
「こういうのってちゃんと報告したいじゃん、滑り止めだけどさ」
「俺は電話で済ませたぞ」
「心遣いが大切なのです」
良いこと言った風に、腕を組んで頷く。
「今日出歩いたせいで風邪引かなきゃいいけどな」
「あっ、酷い!」
「帰り道で滑って転ぶかも」
「それ受験生に絶対言っちゃいけない言葉!というか自分も本番これからでしょうが」
「俺は受かっても落ちても家から通えるからな、大して変わらん」
「そんなモチベーションじゃ落ちるよ?」
「それ受験生に絶対言っちゃいけない言葉」
指摘するとわざとらしく口元を抑えた。
本当にピリピリしている受験生に言うと怒られそうな言葉を言い合うが、そんなこと互い気にするような性格でも間柄でもない。家が二軒先で幼稚園、小学校、中学校、高校と同じ通学路を通った。そのせいで、電話で済むような報告にまでこうして付き合わされている。
当たり前のやりとり、当たり前の関係。思わずため息を吐いた。
「もしかして本当に落ち込んだ?」
「そう見えるか?」
「見えない」
「じゃあ聞くなよ」
「万が一があると悪いから。それに国立受験ってやっぱ緊張するだろうし」
「それを言うんだったらお前だって国立受けるだろうが、しかも東京の」
「倒置法。つまり東京を強調したいということ。つまりこの時の……」
「作者の気持ち読み取ろうとするな」
「受験生ですもの」
偉そうに胸を張る。
「……東京の私立は受かったんだから、いずれにしても春には東京にいるんだよなぁ」
「そう、憧れの東京暮らし!私だって東京に住めばあっという間に……都会女子、だっけ?渋谷女子……谷ガール?になれるんだから」
「おのぼりさん」
「今酷いこと言ったでしょ」
「田舎丸出しだからつい」
「育ちはお互い様でしょうに」
「違いない」
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