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次の地図の印は、マラソン大会のコースの傍にある河原だった。
二人は寒々とした石の上を歩く。川のせせらぎに耳を傾けていると、要が改まったように勇太に向き直る。
「勇太。やっぱりさ、マラソン大会の時の事怒ってる?」
やっぱり気にしていたのか。勇太は一晩答えを探して当時の心境を伝えようと試みた。すれ違ったまま要と別れるなんて嫌だった。
「君の方が勝ってたことや、いきなりレースをほっぽり出したことに怒ってるわけじゃない。俺は、自分に腹を立てていたんだ」
運動が得意な勇太が、小柄な要に先を越されていると知ったのはレースも中盤になってからだった。
驚いたというより心配になった。要の体力でそのペースではゴールまで持たないのではないか。
ところが、その要が何故か逆走して、レースを放棄した。唖然とする勇太を通り過ぎる要の目は、何かを思い詰めたようだったのに、結局そのままゴールまで走り切ってしまった。
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