もう少しそのままで……。

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「……あの公園か?」 ドキン……。 あの公園。 匠さんの言葉に心臓が激しくなったのがわかった。 「通学路にいなかったから、まさかと思って行ってみたら……正解だった」 大輔さんが助けてくれた公園。 以前も私はそこで助けられた。 「ちづるちゃんは優しい子だから。 俺たちに心配かけたくなかったんだろうな」 優しい子? 匠さん、そんな風に思っていてくれたのね。 でも違うの。 ホントはね……。 私の……エゴなんだよ。 「……無理するちづるを見る方が心配だっての」 大輔さんは私の頬にそっと触れる。 大切な物を扱うように優しく……。 「マジ、それな」 匠さんも私の頭を撫でる。 もう、我慢できない。 「……ごめんなさい」 謝りながらムクリと私は体を起こした。 「ちづる! 起きてたのか!」 起き上がった私を大輔さんは驚いた顔で見ている。 「うん……。 結構前から……」 ……起きていたの、ガチで気づいてなかったのね。 「いやはや。 無事で良かったよ、ちづるちゃん」 匠さんは満面の笑みで私の頭を撫でる。 匠さんに撫でられて心地いいなぁ。 「……真っ白」 ふと、私は窓の外をみた。 さっきより、降り積もっている。 「結構降ってたからな」 大輔さんも外をみた。 つられるように、匠さんも外を見ている。 「私……」 私は言葉を詰まらせる。 「ん?」 大輔さんと匠さんは私の次の言葉を待っている。 「私、過去に負けないくらい強くなりたいよ……」 過去に縛られたくない。 でも……。 まだ抜け出せない自分がいる。 「大丈夫、ちづるは強い」 大輔さんはじっと私をみている。 「強くないよ! 強くないから、今日だって……」 ポロポロと私の目から涙が溢れ落ちた。 泣かないって決めてたのに……。 とまれ! 私の涙! 「そういうときは俺たちがいる」 大輔さんが私の涙を拭ってくれた。 「大輔さん?」 いつもクールな大輔さん。 でも……。 今は何だか違う……。
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