過去。

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顔をあげるとそこには学ランを来た少年が立っていた。 少年の綺麗な黒い瞳が私を見ている。 少年は私の手を引いた。 私は少年に着いて行った。 少年の繊細な手は温かく、私は温もりに安心していた。 辿り着いたのはとある施設。 施設の中に私を入れると少年は立ち去ってしまった。 少年に助けられた私は、施設で暮らす事になった。 あれから……10年の月日が流れていた。 あの日以来、「あの人」には逢っていない。 名前もわからない「あの人」。 覚えているのはあの黒い瞳と暖かい手。 そして……。 あの日「あの人」が私に掛けてくれた青いマフラー。 いつか「あの人」に返すために、「あの人」にお礼を言うために私はずっと持っている。 私の大切な大切な……お守り。 この事を知ったら「あの人」は何て言うかしら。 何て思うかしら。 私は「あの人」に恋をしてる。 「あの人」には恋人がいるかもしれない。 結婚して奥さんや子どもがいて家庭があるかもしれない。 だけど……。 会いたい……会いたいの。
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