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ライナ族の一番の楽しみは、お祭りだった。
ライナ族には、時間という感覚がなく、1年、1ヶ月という区切りはなかったが、満月の夜には必ずお祭りをすることに決まっていた。
島の中心に小高い丘があり、その丘の頂上には大きな穴があった。
人々は、生活の中でいらなくなったものや、死んでしまった人、食べた魚の骨や貝殻など、不要なものはすべて、この穴に落とした。
やがて満月の夜になると、この穴の中に火を放ち、みんなで燃え盛る炎を囲んで一晩中、歌い踊り、火祭りに没頭した。
ライナ族は「悲しい」「つらい」という意味の言葉を持っていなかったので、仲間が亡くなっても悲しむことができなかった。
亡くなった仲間の亡骸や不要なものに火を放ち、祈りを捧げながら、朝まで歌い踊り続ける満月の夜の火祭りは、彼らの言葉にできない様々な感情を吸い上げて天を焦がした。
火祭りの激しく燃え盛る炎は、時に、火の鳥を生み出した。
ライナ族の祈る気持ちが強ければ強いほど、大きな火の鳥が炎の中から現れ、燃え盛る炎と共に天へ舞い上がった。
火の鳥は、亡くなった人の魂が昇華する神聖な現象である。
魂の再生を強く祈るパワーが天に伝わった時、魂は昇華する。
人の魂は昇華しながら時を超えて、新しい形となって生まれ変わることをライナ族は知っていた。
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