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その後何度かやり取りをして、三条にあるリプトンでランチをすることになった。どれでもすきなものを頼んで、というので、悩んだ末、海老フライとハンバーグランチにした。セットで紅茶もつけた。
「御坂さんは、趣味とかあるの」
チキンオムライスを食べながら、サトウくんが尋ねた。お見合いみたいだなと思いながら、「写真を撮ります」と答えた。写真って、カメラで? うん、そう。へぇ、すごいね。そこで会話はぷつりと途切れた。
わたしは沈黙をごまかすように咳払いをした。誘いを受けた時は何とも思わなかったが、いざふたりきりで食事をしていると、周囲からどう見られているのか気になった。もしかしたらカップルだと思われているのかもしれない。一刻も早く店を出たい、でもあまり早く食べ終えたら失礼か、いやでもやっぱり早く出たい、とか考えながら、いつもより小さめにハンバーグを切って、ちまちまと口に運んだ。
「休日は何をしているの」
「お寺とか、神社を巡ったり」
「古いものがすきなんだ」
ええ、はい。うなずきながら、そうだろうか、と疑問を抱いた。確かに、間崎教授の影響で寺社にはよく足を運ぶ。だけど寺社仏閣マニアかと言われたらそうでもない。御朱印を集めているわけでもない。古いものがすき、も少し違う。その証拠に、古着は手に取らない。服はまっさらな方がよい。着るたびにしわが増えて、少しずつ汚れて、ようやく自分のものになる。
パッチワークのような会話をしながらも、なんとか無事に食事を終えた。デザートは頼まなかった。
「ちょっと歩かない」
店を出たところで、サトウくんがそんなことを言った。本当は今すぐ帰りたかったが、ご馳走してもらってすぐに解散するのも気が引ける。ハイ、ソウデスネ、なんてロボットのようにうなずいて、肩を並べて歩き始めた。
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