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鴨川のほとりをずんずん歩いた。兵隊のように、ずんずん、ずんずん。四条まで歩いたところで、我に返って大通りに戻った。
みっちゃんが心配していた理由がようやく分かった。自惚れでなければ、いや、おそらく、確実に、サトウくんはわたしに好意を持っている。普通の人なら喜ぶべきところかもしれない。誰かに好かれる、告白される。それは青春の一ページを鮮やかに染め上げる出来事だと思っていた。だけど違う。何かが違う。袖をまくると腕に鳥肌が立っていた。サトウくんのことはすきでもきらいでもない。だけど、全身が拒否している。アオサギとの勝負にも負けた。だめだこりゃ。
せっかくおいしいランチを食べたのに、このまま帰ったら後味が悪い。どうにかして自分の機嫌を回復しなければ。そう考えながら歩いていたら、ふと喫茶ソワレの看板が目に入った。いつか行きたいと思っていたレトロな喫茶店だ。雑誌でも度々取り上げられるくらい有名な店だけれど、幸運なことに行列はない。わたしは喫茶ソワレの扉を開けた。
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