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「お店が二つあります! どちらもあぶり餅のお店ですか?」
「そうだよ。1000年創業の一和(いちわ)と、江戸時代から続くかざりや。どちらもおいしいから、すいている方に行こう」
どちらも気になったが、店の人の呼び込みもあり、今回はかざりやに決めた。作っている様子をのぞいてみると、竹串にささった親指大の餅が、手際よく炭火であぶられている。やすらい祭では、あぶり餅を食べて無病息災を願うらしい。
「おいしいです」
運ばれてきたあぶり餅を食べると、ほろっと白味噌の甘味が広がった。
「普段は赤味噌を使うことが多いんですけど、白味噌もまろやかでいいですね」
「そうだな。久々に食べられてよかった」
「これで一人前かぁ」
おいしいけれど、一口サイズなのですぐに食べ終えてしまった。思わず本音を漏らすと、
「そういうところが食いしん坊なんだ」とため息をつかれた。
一和のあぶり餅を手土産に、わたしたちは帰路に着いた。おそろいの袋をゆらゆら揺らして、石畳の上を歩く。空を見上げると、雲間から太陽がのぞいていた。天気予報も、たまにはあたらない方がいい。
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