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プロローグ:手記
情に流されれば、身を滅ぼす。恨みに苛まれれば心が朽ちる。
とかく、この世は窮屈すぎる。
今の俺は作家や詩人染みたことを考えるようになっていた。
人間の時の俺ならこんなことは考えなかっただろう。のらりくらりと生活し、日々が楽しめればそれで良かったはずだ。
カラスの時は、毎日食べることだけを考えていた気がする。思えば、それが生命の本来の姿であり生物の宿命とも言える。
そうなのだ。生きるとは元来、感情に左右されることなく進行しなければならない。情や恨など、何の足しにもならない。特にもならない。
これがこの世界へ来て349年の歳月の殆どを牢獄のような場所で過ごし、なんとか生き抜いて来た俺の一つの答えだ。
この世は平和になった試しがない。
かつて友と呼べる者もいなくなり、胸に誓ったはずの世界を魔王の魔の手から守り、救うことも出来なかった。
俺はこの世界の救世主では無かったのだ。
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