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第1話 魔王会議の話
全ての魔王は俺のちからに嫉妬している。それもそのはずだ。俺は転生してチート級の力を手に入れたからだ。
文字通りの絵に描いたような転生話だが、まぁとりあえず聞いて欲しい。
俺は前世では魔力を持ったにもかかわらず、痛い目を見たし、前々前世と前前前世では友を助けようとして命を落としてしまった。
前々前世と前前前世って同じ意味か?まぁ良い、続ける。
こんなに転生を繰り返すと思うところも沢山ある。俺は前世までは体躯に恵まれてたが、いつも見た目で判断されて強い男だと思われる。
だけどな、ほんとは……そんなに強くないんだ。メンタルは豆腐なんだ、俺は。
申し遅れた。俺の名はキノスク・スプリ。
人間の時の名前は牧野春吉。
親友で会社の同僚の鈴木兼実を、何かから助けようとして命を落としてしまった。
最初に転生したのは動物のイノシシだった。だが、この時の記憶はあまり残ってない。
その次は魔族。〝キノ・ルイド〟という名だった。
魔族の時は一人の妖精、一人の魔王と行動を共にした。ただ長い年月では無かった。どれくらいの間かは思い出せないが、多分一年くらいだったと思う。
魔王ジルズはその命が消え行く時、俺の心に語り掛けてきた。
「キノ、お前はチート級の力を手にしたいか? 欲しいか?」
「ち、チート? そりゃあ欲しいが、こんな時に言うことかよ」
「欲しいならくれてやる! 探せ! この俺の全ての力をそこに置いてきた!」
「ああ?! どこの設定のパクリだ!? ジルズ!」
「……」
「だから、チートの力はどこにあんだ!!?」
「………俺はも、もう……バタッ」
……とまぁ、こんな感じの最後の会話だった、と思う。
俺はそれからジルズの言う、チート級の力を求めて世界を旅した。妖精のノリルも俺の旅に付き合ってくれたが、まぁ見つからない。
そもそもノーヒントで探せっていう無茶振りをしてきたのもあって、俺のモチベーションは長くは続かなかった。
そんなある日、俺は全魔王の会議に呼ばれた。
目から鱗だった、ミーティングなんてもんがあるなんて。
ジルズの意思を継ぐものとして呼ばれ、魔王達の現状を目の当たりにした。
「ゼアもジルズも脱落とはな、ついてないねぇ」
「まぁでも、こうしてまた集まれたから良いじゃない。僕達は同志でしょ?」
「また貴様はそんな戯れ言を……もう良いからさっさと終わらせようぜ」
「少し待て、もう間も無く定刻だ」
その場には魔王が5人いた。元々全部で8人いたと聞いたが、ジルズが倒れ、他の世界のゼアという魔王もいなくなったらしい。
「あなたがジルズの後継者ね? あなたが考えてる通り、これは私達の現状を把握するための会議よ」
女の魔王が話しかけて来た、スラッと背が高くてスタイルが良くモデルのように綺麗な風貌だ。
俺は何も話して無いのに心を読まれたのか?まさかな。
「リリー、また新入りにナンパをするな。それより、またあいつが来てないな?」
「いつもの通り、欠席連絡があった。〝こんな会議、集まる意味がない〟とな……魔通信でやり取りすれば良いと……」
「俺もそう思う、わざわざこの地に転送されて、顔を揃える必要がある程仲良しでも無いからな」
リモート会議みたいなのがこの世界線にもあるのか?俺がいた元の世界も当時はそれが最先端だったな。
「……よし、定刻だ。始めよう」
仕切る魔王は他の魔王達とは雰囲気が違う。
他の魔王は円卓に配置されてるそれぞれの重厚なデザインの石で造られた席に腰を掛けて行った。元々席に着いていた者はあのリリーという女の魔王だけだった。
「お前もここに座れ……」
そう言われるまま俺は、少しの恐怖感と緊張感を共にし、その人の隣に静かに腰を掛けたのだった。
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