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真奈美によって落とされた爆弾は、智也の心を掻き乱すのには大いに役立った。
環の彼女たちから?
ということは、智也から何かしらの感情が周囲にばれるほどに漏れ出ていたというわけなのか?
「でもまあ、彼女たちから聞いてたのは、《カレシ》が相原くんのこと気になってるみたい、っていう情報がほとんどなんだけど」
「環が俺を?」
「うん」
正直心当たりがない。
智也はたまに中庭の逢瀬を目撃していたから、自分が見ているという自覚はあったが、環の方が自分をというのは、気にしたことがなかった。
「相原くんよく花壇の世話してるでしょ? 《カレシ》はよくそれ見てたんだって」
全然気が付かなかった。
たしかにあの花壇は中庭から見える位置にはある。
しかし環が? 何のために?
「それって結構前からみたいなんだけど、で、今年同じクラスで隣の席になったじゃん? それで一部の彼女たちがもう沸いちゃって沸いちゃって……」
何故沸く。
「最初は《カレシ》の片思い説だったんだけど……最近相原くんも気にし出したぽいって颯太から聞いてさ」
「だっていつの間にか名前で呼んでるし。いつ愛を育んだのかと思ってびっくりしたぜ」
やれやれと肩を竦める颯太に、智也は居た堪れない気持ちになった。
愛。
その言葉が、重い。
智也は観念して環との同居生活を二人に語った。
「ま、まさか、同棲していたとは……」
「真奈美落ち着け。まだ家族愛らしい。まだ」
何故かまだを強調する颯太を放って置いて、智也は弁当箱を開けた。
このままでは環の作った弁当が無駄になってしまう。
「……それ、もしかして《カレシ》?」
「ああ」
「《カレシ》じゃなくて彼女じゃんソレ……」
「で? その《カノジョ》の浮気現場見て、しょんぼりしてるってわけ?」
颯太の言葉に思わず咽せそうになって横を向く。
口の中のものを急いで飲み込んで智也は反論した。
「浮気現場ってなんだよ」
第一、智也と環はそういう関係ではない。
「じゃあ百歩譲って違うとして、なんで智也は従兄弟の女性関係でショック受けてるのさ」
「それは……」
「でも教室のそれさ、本当に彼女たち?」
言い淀んだ智也を遮るように、真奈美が横やりを入れた。
意味を測りかねて真奈美を見つめる。
彼女は複雑な顔で顔を歪めていた。
「あー……あの噂?」
「うん、彼女たちから聞いたことあるんだけど……」
《カレシ》の相手って、本当に女の子だけなのかな?
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