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落ち着け。
智也は移動教室の空き時間を辛うじて歩いているという速さで廊下を突っ切って、自分の脳内を整理していた。
颯太と真奈美と屋上でした会話が脳内で繰り返し再生される。
《たまに体に明らかに女じゃない手の後とか付いてるらしい》
《女の子とは絶対に学校ではシないって言ってた》
じゃあ、あれは。
アレ、は。
智也は思わず握っていた箸を真っ二つに割っていた。
四本になった箸を見て、颯太がため息を吐く。
《それ、もう答え出てんじゃん》
今更気が付いた自分の感情に、理性が追いつかずに智也は焦っていた。
今の授業、教室に環はいなかった。
それが更に智也の焦りを加速させる。
そして、聴こえてきた、声。
「腹のあざえぐかったな〜」
「いやー、あまりにも抵抗するから昨日腹殴っちゃってさ」
ぱっと足を止めて廊下の曲がり角の先を見つめる。
隣のクラスの男子生徒だ。
昨日、腹を、殴った?
「放置してきちゃったけど大丈夫かな?」
「慣れてるし、死にはしないだろ」
気のせいだったらいい。
仮に他の生徒であれ、暴力は見逃せない。
智也は環がいないことを願って、男たちがやってきた方の廊下に向かって、足を早めた。
「たま、き……?」
空き教室の端。
薙ぎ倒された机の隙間に、蹲る白い体。
何度も起き上がろうと腕に力を入れては、くず折れるその姿は。
「とも、くん……?」
智也が愛した環だった。
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