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大学三年となった。
あの事件が終わっても警察やマスコミは大学内を彷徨いていたが、今ではその姿は消え、平穏な学生生活を続けていた。
梓沙は取調べや裁判でも容疑を否認し続けた。
だが事件当夜のアリバイが無い事や、凶器がロッカーの中にあった事実がある為、無罪を勝ち取る事は難しかった。
――哀れな女……
幹貴の口説き文句に堕とされた結果、人生を棒に振ったわね。
私は平然と恋人を奪った女の末路を思い浮かび、喜びに浸っていた。
それでも一つ気がかりな事がある。
私の彼氏だ。
警察を欺く為に付き合ったものの、関係は今だに続けている。
実は以前、口実を作って適当に別れようと画策した事があった。
だが失敗に終わった。
「彼は格好良い」とか「左肩の龍のタトゥーがイカしてる」等と幹貴の話をして不快感を煽り、彼氏の口から別れ話を持ち込まれる計画だった。
ところが彼は何も反応はなく、ただ……
「今の俺を愛してくれればそれでいい」
と優しい言葉をかけてくれた。
彼は私を一途に愛してくれていた。
幹貴とは正反対の男だった。
いつも明るくて優しい。
私の作った料理も美味しいと褒めてくれる。
そんな彼氏に胸が痛んだ。
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