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《 T字路 》
まだスマホが大きく浸透していない時代、携帯電話でナビという感覚が、私たち二人にはなかった。
私の車にもナビを積んでいなかったので、頼みの綱は、背の高い青看板だけだった。
有料道路を使わない選択のもと、進んできた道。
ただし、江戸川を渡るには、これに乗らなければならない。
──さて、どうする。
迂回として側道がある。
──なるほどそっちか。
私は、左にウィンカーをだし、側道へと入っていった。
そこへ出てきたのが、頼みの綱の青看板。
え~っとなになに?
──まさかのT字路、左or右!
なんと、江戸川にぶちあたったのだ。左を指す地名も、右を指す地名も千葉とはおそらく無縁の地名。
しかも、おそらく狭域範囲の無縁の地名。
江戸川が渡れない。
はて、困ったものだ。千葉の引力を感じるままにハンドルをきり、進み続けることにした。
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