《 罠 》

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《 罠 》

 やっこさん曰く、どうやら私は一時不停止違反なのだそうだ。 「見えませんでしたか~? 止まれ表示」  見えるはずもなし。  合流に夢中だったんだから。  見知らぬ土地でありがちな落とし穴。  緩やかな合流ポイントに罠を張る警察。  安易に引っ掛かってしまう善良な市民。  止まれの標識がなかったと主張したが通るわけもなく、あそこです、と若い警察官の指す方向を見ると、信号機よりも高い位置に設置された標識を発見。  一旦停止など予想もしない場所。  遠くからでないと発見できない標識。  右斜め後方からの本線車両に気をとられ、路面の止まれを見落とす運転手。  敵は、気づかれないよう罠を張るのが常套手段。  慣れない土地ほど、気を付けろ。  そう、私は胸に刻みつけた。  そして、観念するしかない状況に、免許拝見の段取り。 「ゴールド免許ですかぁ。良かったですね」  この夏、つい先週の誕生日前に免許更新をしたばかり。  ゴールド免許制度が始まってから初めての更新だったので、人生初のゴールド免許なのだ。  ゴールド免許って何か特典でもあるの?  なにしろ捕まるのもゴールドもこの土地も初めてだらけで分かりません。  私は若い警察官に聞いてみた。 「なんの特典があるんですか?」  まさかの一回なかった事になる権利とか?  彼と顔を見合わせ返事を待つ。
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