16人が本棚に入れています
本棚に追加
《 罠 》
やっこさん曰く、どうやら私は一時不停止違反なのだそうだ。
「見えませんでしたか~? 止まれ表示」
見えるはずもなし。
合流に夢中だったんだから。
見知らぬ土地でありがちな落とし穴。
緩やかな合流ポイントに罠を張る警察。
安易に引っ掛かってしまう善良な市民。
止まれの標識がなかったと主張したが通るわけもなく、あそこです、と若い警察官の指す方向を見ると、信号機よりも高い位置に設置された標識を発見。
一旦停止など予想もしない場所。
遠くからでないと発見できない標識。
右斜め後方からの本線車両に気をとられ、路面の止まれを見落とす運転手。
敵は、気づかれないよう罠を張るのが常套手段。
慣れない土地ほど、気を付けろ。
そう、私は胸に刻みつけた。
そして、観念するしかない状況に、免許拝見の段取り。
「ゴールド免許ですかぁ。良かったですね」
この夏、つい先週の誕生日前に免許更新をしたばかり。
ゴールド免許制度が始まってから初めての更新だったので、人生初のゴールド免許なのだ。
ゴールド免許って何か特典でもあるの?
なにしろ捕まるのもゴールドもこの土地も初めてだらけで分かりません。
私は若い警察官に聞いてみた。
「なんの特典があるんですか?」
まさかの一回なかった事になる権利とか?
彼と顔を見合わせ返事を待つ。
最初のコメントを投稿しよう!