降雪ノーツ

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 「あぁぁぁぁ……あとちょっとでフルコンだったのにぃぃぃぃ……」  曲が終わり、結果発表が画面いっぱいに映る。  1位はもちろんセンターを務めた“彼”――もとい私の推しキャラ。  【文学×アイドル】を題材とした、この音楽ゲームの中で一番純朴で明るい真っ直ぐな子。出会ってすぐに惹かれ、彼がヴォーカルを務めている楽曲は全てフルコンを達成してきたのだけれど……  どうにもこの曲だけはいつも何かしらの形で失敗してしまい、なかなかフルコン達成にならなかった。  項垂れていた頭を起こし、カチリと画面を押せば次の場面へと移る。  『キミの応援、めちゃくちゃ届いてたよっ! ありがとうねっ!!』  推しの元気な声と共に表示された総合成績は決して悪くない。むしろ今までの中では一番の好成績だ。好成績なんだけど……  「うぅぅ……精進しますぅぅぅ……」  あんな迂闊なミスでフルコンを逃してしまったと思い返せば、やっぱり口惜しくなる。  推しに対して愛が足りてないんじゃないかとさえ、嘆きたくなってしまう。  あぁ、駄目だ。とりあえず息抜きしてこよう。落ち着いたらまた再開して――  「……ん?」  暖房をかけているにも関わらず、やけに冷え込むなぁと思ったら。  窓の外では、雪がちらほら舞い始めていた。
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