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学芸員が1人、事務職員が2人しかいない小さな美術館ではあるが、来館者はそこそこ多い。
収納されている美術品は実に多様。
有名作家の小品。
歴史的人物の直筆の手紙や持ち物。
古伊万里。
海外の古い陶磁器。
古い彫像の破片。
まったく出どころも使い道も不明だが美しいオブジェや、何かの一部分。
明治時代に財を成した物好きな商人が生涯をかけて収集した芸術品、貴重品であり、ある意味、その男の宝箱なのだ。
まだ展示されずに倉庫で眠っている宝物。
すなわち、出どころも使い道も不明なオブジェたちのことを、前任者は
『飛べない鳥』と呼んでいた。
『この飛べない鳥たちを何とかして羽ばたかせてやりたいんだ。君にならできる。頼むよ。』
そんな言葉を遺し、ろくな引き継ぎもしないまま彼は亡くなった。
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