小さな恋人 For Happy Valentine’s Day

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 小鳥は僕の頭が気に入ったのか、道に迷い不安だったからか、いつまでも頭に止まっていた。  僕は頭に小鳥を乗せたまま、歯磨きしてコーヒーを落としハムエッグを作った。  焼き上げたトーストにバターを塗っていると、ようやく頭から飛び降りた小鳥はテーブルの上のハムエッグに添えたレタスの葉をついばんだ。  かわいい。  なんて、かわいいんだ!  僕は、小鳥が何を食べるのか、食べても良いのか、まったく知識がなかった。  美味しそうに食べているが、大丈夫だろうか?  僕はあわててネットで調べた。  まず、この小鳥はルリコシボタンインコという種類であることが判明。  レタスは時々は食べさせてもよいが水分が多いので食べさせ過ぎはよくないことがわかった。  どの程度が食べさせ過ぎなのか不安になったので、一欠片ちぎり取ってインコの前に置き、後は自分で食べてしまった。  インコはトーストの端っこをついばみ始めたが・・・調べるとパンは危険だということがわかり、あわてて取り上げた。  小鳥は体が小さいので、ほんのわずかな量でも体によくないものは食べさせない方がいいだろう。  だが、きっと・・・コイツはお腹を空かせているんだ。  どうしよう。    僕は、目の前で何か食べたがっているインコに、一刻も早く安全な餌を与えてやりたいと思った。  しかし、コイツを部屋に残して餌を買いに出かけている間に、何か予想できない場所にハマったり、足の爪を引っ掛けたりしてケガをしたらどうしようという不安に駆られる。  何か鳥かごの代わりになるような箱はないだろうか?  部屋を見渡したが適当な箱は見当たらない。  いっそのこと、カバンに入れて、いっしょに買い物に連れて行こうか?  僕は持っているカバンをいくつか出して考えた。  いや・・・空気の流通が悪くて体調を崩すかもしれない。  そもそも暗くて狭苦しい空間に閉じ込めたままユラユラするのは・・・自分だったら絶対に恐怖でパニックになるだろう。  じゃあ、どうする?  いろいろ考えている間も、インコは僕の手に上ってきたり、肩や頭に止まったり、本棚からベッドへ、ベッドからテーブルへ、テーブルからトースターの上へと、せわしなく部屋の中を飛び回った。  「体調が悪いので今日は休む」 と、僕は職場に電話した。  9時頃、家から一番近いペットショップに電話して、ルリコシボタンインコのための鳥籠と装備一式、餌その他、飼育に必要なものを配達してくれるように頼んだ。 「予算はどのくらいまで?」 と聞かれ、まったく予想ができなかったので 「10万円以内で揃えられますか?」 と尋ねると 「わかりました」 と言う。  意外とすぐにペットショップの男がやって来た。  鳥籠は予想していたより大きい白い四角いタイプで、縦横奥行き共に1mくらいあった。  その中に止まり木やブランコ、はしご、オモチャ、寝床用の木箱、巣草、給水器、エサ入れ、など、いろいろなものが設置されていた。  エサは3種類、その他ビタミンやカルシウムのサプリメント、餌を与えるスプーン。  インコの気持ちと飼い方がわかる本まで、至れり尽くせりである。  ペットショップの男が部屋に入って来た時から、インコは僕の頭の上に止まったまま動こうとしなかった。  ペットショップの男は不思議そうに 「随分、ご主人に慣れてますね。」 と言った。  確かに、今、初めて鳥籠他一式を揃える僕に、インコがこれほど懐いているのは不可解な現実だろう。  僕自身、何が何だかわからない。 「インコは寂しがり屋ですから、よろしければ恋人用にもう一羽インコを購入されますか?ゲージは、これだけ大きければ二羽飼っても問題ありません。」 「いえ。結構です。」 「そうですか。本にも書いてありますが、一羽で飼う場合は毎日インコと遊んで下さいね。余裕がある時は遊んで忙しい日は遊ばない、というのはダメです。寂しくなるとインコはストレスで自分の羽をむしったりして死んでしまうこともありますから。」 「わかりました。仲良く暮らします。」  
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