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ペットショップの男が帰ると、インコは安心したのか食卓テーブルの上に下りてチョンチョン軽く飛び跳ねて遊んでいる。
僕は早速、餌を少しスプーンに載せてインコの目の前に差し出すと、待ってましたとばかりにインコはついばんだ。
水入れを洗ってテーブルの上に水を置くと、バタバタして水入れをひっくり返した。
一つ一つのインコの動作が、たまらなくかわいい。
僕はインコに尋ねた。
「おまえ、名前は? 名前あるんだろ?」
インコは甲高い声で叫んだ。
「えっ? ライム?」
僕には、そう聞こえた。
確かに、体の下の方は、きれいなライム色だ。
「わかった。ライムだな・・・ライム、おいで。」
僕が、そう言って手を伸ばすと、ライムは僕の手に飛び乗った。
かわいい。
どうしようもなく、かわいい。
僕は、嬉しくて、胸が熱くなった。
こんなに愛くるしい生き物が、なぜ僕の部屋に飛んで来たのだろう。
僕は、ライムを両手で抱くように軽く支えながら考えた。
ライムはキョロキョロと首を傾げたり回したりしながら僕の手の中から出ようともしない。
冷静に考えるなら、新聞に広告を出すか、警察に申し出なければならないだろう。
僕がライムを保護している、と!
こんなに人に慣れているということは、きっと、前の飼い主は・・・相当、ライムを可愛がっていたはずだ。
可愛がっていたライムがいなくなった飼い主は、きっと血眼になってライムを探しているに違いない。
「ライム・・・ごめん。本当は、帰りたいよな?」
ライムは何も答えなかった。
「それとも、僕の恋人になってくれる?」
ピチューッ
ライムは元気に返事してくれた。
わかってる。
それが返事だとは限らないことを。
それでも僕は、ライムを手放したくないと思った。
ライムといっしょに仲良く暮らしたいと心の底から憧れた。
けれど・・・その日、一日と一晩、考えて。
僕は、近くの交番に、ルリコシボタンインコを一羽保護していることを告白した。
某新聞社にも電話した。
本当は、黙って、僕の恋人にしてしまいたかった。
ライムは、僕を信頼しているように見えたし、僕といっしょにいることが楽しそうにも見えた。
けれど、もし僕が、ライムの元飼い主だったら・・・と想像すると、僕は気が狂いそうだった。
こんなに愛らしい命が、フッといなくなってしまったら?!
ライムが可愛くて、愛おしくて、いつまでも見ていたい、遊んでいたいと思えば思うほど、ライムの幸せを願わずにはいられなかった。
思い切って、ライムを保護していることを公開しよう。
まさに清水の舞台から飛び降りる覚悟で、僕は決断したのだった。
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