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男性は本の山から下りてくる。
「うおっとととととっ!?」
本の山から滑り落ちて平積みしている本の上に落ちて、更に周りの本が崩れて男性の上に。
「痛て…。すみません。すみません。」
男性は笑顔で頭を抱えながら女性の前に。
「あ、あの…探偵さん…ですか?」
「ええ。なにかお困りで?」
「…あのお金とか相談料について…。」
男性はニコニコしながら女性を見つめている。そして笑顔の瞼がゆっくりと開く。
手に握りしめている、催促状を見つめる。
「…因みに相談内容は?」
「…えと…。実は…母の死についてです。」
「…へぇ。…。」
男性は女性の目を見る。見つめられた女性は半歩下がる。
男性の目線は顔とカバンと靴を見る。
「…ほぅ…。……。」
彼の目には鞄の隅にあった名刺。履歴書。靴には土。
「…もしかして…、何か、金銭的に困ってる?」
「え?あ…いや?まぁ…。」
女性は首を捻り返事を誤魔化すのに対して男性は笑顔で話を始める。
「君がここに入ってくるときの態度。かなり慎重だった。それに今も不信感は抱いているはず。それなのにここへ来たのは興味より現実問題があるから。
手に握る催促状や履歴書を持っているからして職を探している。そして探偵業を依頼するときすら最初にお金の問題を聞いてきた。
おそらく入り口の看板などから僅かな希望を抱えてきた。依頼内容は切羽詰まるというより腑に落ちない点でもあるのかな?」
男性の話に女性は目を丸くする。
「どうかな?」
男性が再度確認して我に返りうなずく女性。
「…いいよ。分かった。この費用は今は取らない。
その相談内容。つまりは『物語』教えてくれないかな?」
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