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物語1 タンスの下敷き事件
「私は斉藤小春。
この街の山の上に一人で住んでいる、斎藤良子の娘です。
母はとてもしっかり者で今まで元気に過ごしていました。それでも近くに住む私と兄の大貴の二人で定期的に面倒をみていました。
しかし、最近アルツハイマー病の症状が出てきしてしまって。会いに行く頻度も上げていったんです。なのにこの間、母は大きなタンスの下敷きになってしまい亡くなりました。」
「それは…不運な事故ですね。」
「…。」
小春がうつむき黙るのを見て、探偵は慌ててなだめる。
「でもあなたは少し気になるんですね。」
「はい。」
「現場を詳しく案内してもらってもいいですか?それともう少し詳細な話を。」
小春は目から少しの希望もなくなってしまっていた。
「…事故なんですよきっと!警察もそう言ってましたし、鍵は全てかかってました。玄関はリフォームして、電子キーになったので開閉の時間も履歴で残り、そこには怪しい履歴は無いし、タンスを倒すのは難しい。それに、母は恨まれるような人ではないですし。
リビングの真ん中。縁側の窓から一番遠いタンスが倒れていたし。そんなことを意図的に起こすなんて…。
巻き込まれるような人でもないと思ってたけど。」
「…わざわざタンスを倒して殺害をしようとするには少しリスクが高い…。確実でもないし。」
探偵は少し頬杖だ。
「すみません。無駄話を。」
「あああ!大丈夫ですよ!」
「何がですか?事故ですよ!きっとね!」
小春が怒るのに対しで探偵は首を横に振る。
「不可解な事故。だからきっとあるはずです。この事件を解く物語が。」
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