物語1 電気屋

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物語1 電気屋

「すみません、こんなお話を聞いて。」 「いいよ、町下(まちした)です。町下電気の。」 「土曜日に良子さんを訪ねに?」 「ええ、エアコンの調子が悪いと聞いてました。しかしインターホンでも出なくて。そのまま帰りました。」 「そのまま?」 「はい。」 「因みにですが、良子さんのお家に上がったことは?」 「ありますよ。連絡を受けたエアコンは私がつい先月取り付けたものです。だから不具合も気になって。」  「不具合の内容は確認しました?」 「いや、してないよ。というか、あの部屋にエアコンがほしいというのもあまり聞いていなくて。良子さんも家族もあんまり使わないとか。」 「へぇ。」 「ついでに入り口の扉は?」 「それも私がやりましたね。」  「開閉のデータは確認とか編集できるですか?」 「それはメーカーに問い合わせないと。」 「なるほど…。ではそこは簡単にいじれませんね。」 「そうですね。私はあくまでも工事屋なので。」 「因みに良子さんは病気を持っているですがご存知ですか?」 「ええ、先端恐怖症と。なので工具を使うときには部屋を離れてもらいました。」 「エアコンの時も?」  「はい。お部屋は綺麗で、エアコンの取り付ける面とは逆、タンスも何もない壁面に荷物を広げました。お部屋は綺麗で広々と作業出来ました。」  「そうですよね。」  
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