あったはずの未来

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種田山頭火は街中で飲み歩いていた 経済的な危機を抱えながら 文学にのめりこんで破産したところも僕を思わせる 母が自殺したところも祖母を失った僕と通じる だから酒を飲むしかなかった 僕は祖母を失った約1年後、山頭火を知った 山頭火と僕は似ていると思った それまでのヒーロー、藤子・F・不二雄は若くして漫画家になる夢を叶えた 僕は作家になる夢を叶えられなかった 藤子F以前のヒーロー・司馬遼太郎も作家として成功した 僕とは違う種類の人たちとしか思えず憧れる意味があるのか疑問に感じることも、よくあった 山頭火は違った だからこの9年、山頭火はヒーローだった 尾崎放哉も仕事中、酒を飲む人だった 放哉も破産し酒を飲みながら身を滅ぼした 僕も仕事で悩みがあると酒を飲んだ 仕事中でも 放哉をならっているところがあった 酒を野外で飲み歩くのは山頭火を真似していた 仕事にせよ、ただ出かけるにしても車を運転しているのに 山頭火・放哉は車は運転していない 僕にとって飲酒して運転する以外の道はなかった 祖母を失った悲しみ苦しみは酒でまぎらわすしかなかった 父への憎しみも だが結果的にこれが身を滅ぼした 自分とは違ってもよかった 酒を飲まず創作した藤子F、司馬遼太郎がヒーローであり続けたらどんなによかっただろう
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