ポップコーンはありません

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 ああ、好きー……。こうやっていつもあたしだけを甘やかしてくれるから、ズブズブと好きになっていっちゃう。にやける顔を抑えつつ、次々にグラスへと伸びる手によって、そして蕩けそうに甘い好きな人からの差し入れによって、ゆるゆると頭のネジの緩み始めたあたしの酩酊への道は真っ直ぐで短かった。何杯飲んだか分からないままにお会計をし、流れるように店を出る。ああ、いい気分だ。  これならまたきっと来週から頑張れる。今日は金曜日。嫌なことは忘れて、明日と明後日でゆっくり自分を甘やかして、月曜日からまた頑張ろう。  まあ、月曜日からも変わらずにクソ野郎と同じ部署ってのがあれだけど。 「舞ちゃーん!忘れ物!」  聞き間違えるはずのない声。あ、あれ?忘れ物?携帯、ある。カバン、ある。財布……ある。んん? 「舞ちゃん、これ」  手渡されたのはさっきのホワイトチョコレート。袋に残っていた分を全部くれたんじゃないかってくらいに両手はどんどんいっぱいになっていく。 「店長これ……?」 「舞ちゃんいつも頑張ってるからさ、入社する前から見てるし、居てもたってもいられなくて、俺」
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