お隣さん

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お隣さん

五月― 高橋 駿(タカハシシュン)の最近の目標は、来年二月の二十歳の誕生日までに童貞を捨てることだ。 その為に今日も大学の講義後、友人の中野康太(ナカノコウタ)とコソコソと合コンの相談をしていた。 「…でさ、俺の高校の時の女友達がさ、女子大行ってて」 「おお、いいじゃん」 そこまで話したところで、講堂内に黄色い声が上がった。 「きゃー、櫂(カイ)くん!」 「櫂くーん!デートして」 如月櫂(キサラギカイ)。4月生まれの二十歳。 駿のお隣さんの次男、櫂は昔からモテルックスのチャラい奴で。 女の子達に「ごめんね、また今度遊ぼうね」と頭ポンポンやらウインクやらしながら、駿に近づいてきた。 「しゅーん、帰ろー」 「いいよ、中野と帰るから」 「むりー!今日はさ、怜(レイ)に車借りて来たんだ。乗っけてってやる」 そう言いながら駿に後ろから抱きつき髪に顔を埋めた。 「はあ…駿の匂い」 「おいぃっ!やめろって!まじで!」 駿は櫂の手を掴み、離そうとするが、身長も体格もデカい櫂には敵わない。 女子たちの恨めし気な視線をいっぱいに浴びながら、駿は泣きたくなってきた。 櫂の兄、如月怜(キサラギレイ)は五歳上の銀行員で、有名国立大卒のインテリ。 車も高級車に乗っていて、櫂はよくそれを借りてくる。 普通なら女の子を乗せるのだろうが、櫂はいつも助手席に駿を乗せたがった。 「じゃあ、中野また連絡するから」 「おー、こっちも決めとくわ」 仕方なく中野と別れて櫂と車に乗り込んだ。
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