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翌朝の通学路。俺はスマートフォンで海を呼び出した。
「やべえよ海っ、合体の時間だっ!」
息を切らせながらすぐさま駆けつけてくれた海にキュンとしたのも束の間、彼は俺の頭に拳固を落とした。
「なんだよこいつ!こんなに厳ついなら厳ついって先言えよ!ぜってえ負けんじゃねえか!」
海が言うこいつとは、すぐそこにいる強面のことだ。チンピラ、ヤクザ、暴れん坊。そんな言葉が似合う男。
短くなった煙草を落とした男は、それを地に擦りつけながら言う。
「なんだおめえ。ちょっと待って下さいーとか言うから待ってやったら、助っ人も高校生じゃねえか。そんなんでこの俺に勝てると思ってんのか?お前達、法を犯したこともねえくせに」
その言葉にピキンと浮き立つのは俺の血管。
「ナメんなよっ!ここにいるのは名村海だぞ!名前の『名』に村人の『村』に、海は広いな大きいなの『海』って書くんだぞ!」
そこまで言い切れば、俺はまたボッコンと頭を殴られた。
「おい神っ!なにしっかりと俺の自己紹介してくれちゃってるんだよ!こいつぜってえ人の道外してんぜ!?家族もろとも俺、殺されんじゃん!」
「だ、大丈夫だよっ。ここでこてんぱんにしちゃえば平気だってっ」
「相手のがたい見てみろよっ!自販機並みじゃねえかっ!」
海の焦慮具合に、俺は改めて喧嘩相手の全身を目視した。
逆三角形体型の上へ乗せられたスキンヘッド。黒スーツの袖から覗くは、ちりちりした毛と輝く腕時計。ついでにほくそ笑む口元から見えた歯も何本か煌めいていた。
ごくりと一粒唾を飲み、己を落ち着かせる。
「大丈夫だ、海。俺は今日、あやとりを持っているから」
「はあ!?あやとり!?」
「それできっと、なんとかなる」
胸元で作ったガッツポーズで海を鼓舞して、すうっと息を吸う。
「巷で話題の海神コンビとは俺等のことよっ。後悔してももう遅いぜ、電球頭さん」
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