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「行く」
ズコッと再び転けたのは海の部屋。絨毯の上だったからか、廊下よりは痛くない。
「え、お前、俺の話聞いてた?」
「聞いてたよ。美咲とアイラと飯食うんだろ?」
「美咲が海と付き合いたがってるってとこも、ちゃんと聞いてた?」
「聞いてた」
「んで、行くの?」
「おう」
ひょえーとたまげる俺の側、海は菓子の袋を開け出した。むわっと香る、何か。
「なにそれ……」
「ドライハーブチーズスパイシークッキー」
「ひょえー」
「神もいる?」
「クッキーはいらねえから洗濯バサミくれ」
海から受け取った洗濯バサミで鼻を摘み、俺は続けた。
「俺は乗り気になれねえよ。だって海にその気がなくたって、美咲はその気しかねえんだから。見てていい気分じゃねえ」
ボソボソと口内でクッキーを堪能し、ごくんとゆっくり飲み込んで、また新たな一枚を取ってから海は言う。
「そのことなんだけどさ、神」
少しだけ、真面目な表情。
「俺、美咲と付き合ってもいい?」
その発言には驚愕しすぎて、ひょえーの「ひょ」の字も出てこなかった。
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