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「クセエヨ」
鼻の穴を確と閉じたまま喋れば、図らずともいつもとは違う声色に。
「オレガパクチーニガテナノ、シッテルデゴザイマショ」
海はそんな俺の手を、無理矢理引き剥がした。
「神だって俺がハーブ系好きなこと知ってんだろっ。いい加減慣れろよ、恋人の好物くらい」
再び鼻腔を刺激する、ザ・アジアン。俺は口呼吸へ変更した。
「な、慣れねえよっ。これ、慣れるとかじゃねえから、生理的な問題だから」
「頑張りゃ慣れるって」
「無理無理っ。俺からしてみれば三日間風呂入ってないおっさんの脇と同じレベルだから。それ嗅ぎながら食事とかきちいから」
「うっわ、お前今、全世界のパクチー好きを敵に回したな」
握られた腕に、力を込められる。
ああ力強い、カッコいい。
「と、とにかくはよ食えっ。スープ全部胃に沈めろっ」
食後は海の部屋にでも行って、まったりとキスでもしたかったのに。この口臭では、お預けとなりそうだ。
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