作戦

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✴︎ 「もう俺、お前と今まで通りできねえわ」  そう言われたのは、中一の冬。甘党な彼へ贈るために一生懸命作ったチョコを携えて、愛を告げたバレンタインの日。 「神人のことは友達だって思ってたから楽しくできたのに、お前が俺に恋愛感情抱いちゃ、おしまいじゃん」  おしまいとは、何がおしまいなのだろう。寸刻悩むが答えは出なかった。 「神人の中身は女ってこと?」 「いや、ちげえ。ただ好きになったのが、男のお前だっただけ」 「じゃあ女のことも恋愛対象?」 「いや、それはねえかも」 「じゃあお前は、男なのに男を好きなんだ」  この広い空の下、そういう人もいる。それを俺は知っていたから、自分が変だとか間違っているとか、そんなことを思ったことは一度もなかった。それなのに。 「もう俺、お前と今まで通りできねえわ。だってお前、変だもん」 「好き」のたったの二文字(ふたもじ)が、俺と彼の関係にピリオドを打たせた。
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