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放課後のカレー屋。今日も今日とて、アジアンの香りが席に漂う。
「なんだよ海の皿。その緑色したルー……」
「だってグリーンカレーだもん」
「なんで緑なの」
「青唐辛子じゃん?」
「ココナッツミルクの匂いしてんのに辛いの?」
「おう」
「不可解なメニューやのう……」
俺は肉とじゃがいもと人参と……説明するまでもないカレーを口へ運ぶ。
「美咲と付き合ったらしいじゃん」
普段通りの口調で聞きたかったけれど、幾らか声は裏返った。
「おう。無事付き合えた」
「いつ親に紹介すんの?」
「んー。付き合ってすぐにうち来いよっていうのも下心と間違われて警戒されそうだから、クリスマス終わったあたり?冬休みとか」
「そっか……」
と、いうことは。
「クリスマスプレゼント、美咲にやるの?」
好きな人が、他の誰かに何かを贈る。想像しただけでも、胃がちくちく疼き出す。
背を反らせた海は言う。
「そっか。やべ、全然気にしてなかったけどそういうのしなきゃだよな。親に紹介する前にフラれたら意味ねえもんな」
ポケットからスマートフォンを取り出して、何かを検索し始める海。画面を覗けば、『クリスマス プレゼント 女』と入力されていた。
「どれがいいと思う?」
卓の真ん中にぽいと電話を横たわらせ、指で画像をスクロール。指輪やネックレスに腕時計。身に付けるものが多かった。
「どれでもいいんじゃね?」
「神だったらどれ」
「し、知らねえよっ。俺、女じゃねえし」
「う〜ん……」
真剣に悩み出した海を前に、俺はカレーを食べ切れなかった。
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