解散

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「海ぃ……」  闇雲に走り、辿り着いた公園のベンチへ腰を下ろすと、涙がはらりと舞い落ちた。 「海、海ぃ……」  俺は海が大好きで、海も俺を好きでいてくれているのに、どうしてうまくいかないのだろう。 「ううっ……」  今は冬。寒くて、吐息は白くて、木々は裸んぼう。  ただでさえもの寂しいこんな季節だから、この国はクリスマスや正月、バレンタインなどを積極的に取り入れて、華やぐことに奮迅(ふんじん)している。  そう、だから行き場を失くしたこの切なさは、国のせいにでもしておこう。幸せ者しか楽しめないようなイベントばかりを用意した、日本のせいに。  毎日が月曜日ならば、毎日がただの火曜日ならば、何年も前のバレンタインのことも、昨日のひとりぼっちも、もうとっくに忘れられたかもしれないのに。
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