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面倒くさい。今の俺、そういう気分じゃない。
だから暴れた。
「コラ離せよまじで!ハマーと喧嘩なんかだりいよ、したくねえよ!」
ジタバタと足掻いてみせるが、脇を持つふたりは俺より体格の良い人間。地に足は着かないし、この体勢ではキックに力も入らない。
「ちっ、暴れんなよ!てめえが今日濱口さんに殺されんのはもう決定してんだよ、諦めろっ!」
「なんだよもーいいじゃんっ!あいつが一回勝って俺が一回勝って、それでジ・エンドじゃん!」
「なんでてめえが勝手に勝ち逃げしてんだよ!濱口さんに死体にされてから終われや!」
「死体になるのも面倒くせえよ、だりいよ!」
釣られた魚のようにビチビチ暴れて抵抗するが、体格の差に加えて二対一。俺は腕尽くで濱口の元へと連れ去られた。
抗うことを放棄した俺が、運ばれている間に体力温存でもしておくかと彼等ふたりに身を委ねていれば、ふいにその身体はロープで括られた。
「は、はい……?」
思いがけず、上擦った声が抜けていく。
到着した場所は、どこかの工事現場だった。目に入るは「休工中」の看板がひとつと、足場がたくさん。倉庫や大型スーパーを思わせる。
冷たいアスファルトの上で下ろされたかと思ったら、正座を強いられ、嫌だと言えば殴られた。上顎を弾きながら膝を畳む。
「よう、カス」
濱口の声がした。
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