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「なにお前。今気付いたけど、ほっぺたどしたん?」
無言で痛みを堪えている俺へ対し、濱口は友人のように話しかけてきた。
「エッグい傷。これ絶対刃物じゃん。喧嘩相手にやられちゃったん?」
面前でしゃがみ込み、俺の頬を指でなぞって。
「よかったわあ、その相手にお前殺されなくて。だってもし今この世にお前がいなかったらさ、今日の俺、お前のこと殺せねえもん」
な、と彼が仲間に言えば、その場は野太い笑い声で溢れた。
「はい、じゃあ次ヨウタなー」
濱口が腰を上げて二歩下がる。代わりに俺へと一歩寄るのは、ヨウタと呼ばれたその男。
「さーせん、濱口さんよりも先いかせてもらっちゃって」
揃えた指で謝意を示し、その手がグリップを握ればバットは上がる。
「青井神人先輩っ。あんたに直接の恨みはないっすけど、濱口さんやった時点で、俺はあんたの敵なんでっ」
ガンッと再び振り下ろされたバット。意識が束の間飛びかけた。
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