解散

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「コラてっめえハマー!この前テスト出るって言っただろ!ここにいるのは相方って名前じゃねえ、名村海だ!漢字知りたいか!?名前の『名』に村人の『村──」  バチコン!  今日は普段より一段と早く、海に殴られた。 「お前好きだな、そのくだり」 「ごべんなざい」 「口殺すぞ?」 「ごろざないで」 「じゃあもう二度とすんな。誰も笑えねえから」 「ばい」  俺の唾液たっぷりついた拳を海は払って、俺はようやく息を吸う。 「(やいば)は喧嘩にいらねーよ。勝ちてえだけであって、てめえ等の人生を奪いてえわけじゃねえから」  そんなカッコいい台詞を吐いた海は、アンダースローで遠くへナイフを投げ捨てた。俺は自然と前傾姿勢。バットを持った敵が三体。これをどう討ち取るかと模索する。  ガンガンとバットで地を強打しながら、三人は()を詰めた。 「おいおい馬鹿げたもんだなあっ。自ら武器を捨てる奴がどこにいるよ?こっちは捨てねえぞ?金属バットっていう(かって)え武器を装備したまんま、てめえ等と闘ってやるからな?」  ペッと唾を吐くは海。 「どーでもいいわそんなん。卑劣がお前等の特技だろ?精一杯活かせよ」 「んああ?てめえはカスのおまけだろーがっ。喋んなよ」 「おまけじゃねえよ、彼氏だよ。お前等は俺の大切な恋人を傷付けた。だからノす」  途端に俺の目はハートになる。濱口も傍のふたりも、工事現場の足場さえシャットアウトし、海以外が見えなくなる。 「海たん好きーっ」 「うっぜ、引っ付くなこんなとこでっ」 「好き好きーっ」 「離せ!喧嘩できねえだろっ!」  チュッと海の頬にキスをして、くふっと喜んで、眼力をきかせる。 「おいハマー。今日俺等海神に負けたら、二度とその(つら)見せんなよ?もし俺等の周り彷徨いたら、タロウもジロウも(いじ)めちゃうからな」 「ケンジとヨウタだコラ」 「じゃあそのノブナガとヒデヨシには気をつけるよう言っとけ」 「どういう耳してんだカス。歴史好きが全面に出すぎだオラ」  俺は再び考える。三対二。数で劣っている俺等の武器は拳のみ。  さあ、どうやってこいつ等を倒そうか。
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