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「海、行っけぇぇぇええ!!」
全くもって何も思い浮かばなかった俺は、とりあえず応援へとまわった。
「雑魚から潰しちゃえ〜!」
ヒューヒューと口笛を奏で、目には見えぬタオルを回す。
狙いをひとりに絞った海は、豹の如くスタートを切る。ケンジだかヨウタだかの男はすかさずバットを構えた。
「へっ……!カッコつけて素手だけで歯向かってきちゃってまあ。そんなもんこのバットで──」
海の顔横、バットを水平に這わす男。あわわと俺が指を咥えると、海はそれを嘲笑うかのように耳横で掴んで止めた。
血気盛んな海と、血の気が引いた男の視線が交わる。
「素手で受けられるくらいの弱え棒、ただの小枝じゃねえか糞コラ」
「ひ……!」
「使い慣れてもいねえもん、バカスカ振り回してんじゃねえよガキ!」
バンッとバットを奪った海は、それを俺の胸元へと放ってくる。
「神、それ成仏させといてっ!」
「ああ、はいはいっ!」
海の指令に従い、俺はそれを遥か彼方へ葬った。
男の胸ぐらを掴んだ海は言う。
「歯ぁ食い縛れ」
「へ……?」
「今からてめえにアッパー食らわせて気絶させっから、歯ぁ食い縛れって言ってんだよ!」
「はひ!」
宣言通り、海は下からの一発で男の意識を奪い取る。コンクリートで平らに伸びた彼を見て、残りのふたりは絶句していた。
「海たんカッコゆす!」
俺はひとり、乙女になる。
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